このページの要点
- 相殺は相手方への意思表示でし、条件・期限を付けられない。双方の債務が相殺に適するようになった時にさかのぼって効力が生じる(民法506条)。
- 債権譲渡は、譲渡人からの通知または債務者の承諾が対抗要件。債務者以外の第三者に対抗するには、確定日付のある証書が必要(民法467条)。
- 内容証明の日付は確定日付になり(民法施行法5条1項6号)、届いた日は配達証明で示す。法人の金銭債権は債権譲渡登記の方法もある(動産債権譲渡特例法4条)。
- 譲渡制限の意思表示があっても、債権の譲渡は効力を妨げられない(民法466条2項)。債務者は、悪意または重過失の譲受人への履行を拒める(同条3項)。
相殺と債権譲渡は、一見すると関係のない手続ですが、通知の側から見ると共通点があります。どちらも、通知書の中身より先に、方式が効力を左右するという点です。相殺の意思表示には条件や期限を付けられませんし、債権譲渡を債務者以外の第三者に対抗するには、確定日付のある証書で通知または承諾を得る必要があります。「差し引いておきます」「譲渡したと伝えました」では、後から効力を主張できないおそれがあります。
このページでは、売買代金と立替金を差し引くとき、債権を第三者に譲渡したことを債務者に伝えるときの通知について、条文の方式、通知書に書く事項、確定日付の取り方を整理します。取消し・解除・相殺・更新拒絶といった言葉の違いは取消し・解除・解約・撤回・相殺・更新拒絶の違いのページで、契約書の通知条項は契約書の「通知」条項の作り方のページで扱っています。債権譲渡の取引の類型(売買か担保かなど)や、貸金の債権の取扱いは別のガイドで扱い、ここでは通知の方式に絞ります。
結論:どちらも「方式」と「到達」を決めてから書く
相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示でします(民法506条1項前段)。この意思表示には、条件または期限を付することができません(同項後段)。つまり、「期限までに支払わなければ相殺する」という条件付きの通知は、相殺の意思表示としては成り立ちません。
債権譲渡は、譲渡人が債務者に通知をするか、債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができません(民法467条1項)。さらに、この通知または承諾は、確定日付のある証書によらなければ、債務者以外の第三者に対抗することができません(同条2項)。通知の中身を整えるだけでは足りず、確定日付のある証書にする必要があります。
相殺の通知と債権譲渡の通知の違い
| 項目 | 相殺の通知 | 債権譲渡の通知・承諾 |
|---|---|---|
| 誰が誰に出すか | 相殺をする当事者の一方から、相手方へ(民法506条1項) | 譲渡人から債務者へ(通知)。または、債務者が承諾をする(民法467条1項) |
| 何の意思表示か | 互いの債務を対当額で消滅させる意思表示 | 債権を譲渡したという事実の通知。債務者の承諾は、譲渡を知っているという認識の表示 |
| 条件・期限 | 付けられない(民法506条1項後段) | 条文は条件・期限について書いていない。何の債権をいつ譲渡したかを特定できる記載が必要 |
| 効力が及ぶ範囲 | 双方の債務が相殺に適するようになった時にさかのぼって消滅(民法506条2項) | 通知または承諾により、債務者その他の第三者に対抗できる。債務者以外の第三者には、確定日付のある証書が必要(民法467条2項) |
| 方式 | 方式の定めはない。書面で出し、到達を残すのが通常 | 債務者以外の第三者に対抗するには、確定日付のある証書による通知または承諾 |
上の表は、二つの通知の違いを並べたものです。相殺は互いの債務を消す意思表示、債権譲渡は債権の移転を債務者や第三者に主張するための通知ですから、目的が違います。どちらも、意思表示や通知が相手方に届くことが前提です。到達の考え方は通知はいつ届いたことになるかのページを参照してください。
相殺の通知:要件、意思表示、書き方
相殺ができるのは、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときです。この場合、各債務者は対当額について相殺によって債務を免れることができます(民法505条1項本文)。ただし、債務の性質が相殺を許さないときは相殺できません(同項ただし書)。金銭債務どうしは、典型的に相殺に適した債務です。
相殺の効力は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼって生じます(民法506条2項)。たとえば、双方の弁済期が来た後で通知を出したとしても、弁済期が来た時点で債務が対当額で消えたものとして整理されます。そのため、通知を出した後の遅延損害金の計算などで、いつの時点を基準にするかを意識する必要があります。
通知書には、次の事項を書きます。まず、自分の側の債権の特定です。契約の名称、発生日、金額、弁済期を書き、請求できる債権であることを示します。次に、相手方の債権の特定です。立替金、代金、違約金など、相手方が持っている債権を、同じように特定して書きます。そのうえで、「対当額において相殺する」という意思表示そのものを書き、相殺後に残る額と、その扱い(残額の支払期限や振込先)を書きます。
書き方の例相殺の通知書の記載の例(一般的な例)
- 当方は、貴社に対し、売買代金債権(契約名・発生日・金額を特定して記載)を有しています。
- 一方、貴社は、当方に対し、立替金債権(契約名・発生日・金額を特定して記載)を有しています。
- 当方は、本書をもって、前項の当方の債権と、貴社の債権とを、その対当額において相殺する旨の意思表示をします。
- 相殺後に残る当方の債権(または債務)の額は、金○円です。残額は、○年○月○日までに、下記の口座へお支払いください。
相殺の意思表示には条件や期限を付けられません。「○日までに支払われないときは相殺する」のような書き方は避け、相殺をするなら相殺そのものを書き、残額の支払の催告は別の文として置きます。
枠の文例は、相殺と残額の請求を別の文で書いた一般的な例です。相殺の意思表示は、一文で明確に書きます。残額の請求や支払期限は、相殺とは別に、催告に当たる内容として書きます。支払の催促そのものの段階の考え方は請求書から内容証明までのページで扱っています。
書き方の例(一般的な例) 相殺の通知書の書き出し
条件を付ける書き方
理由相殺の意思表示には条件を付けられません(民法506条1項後段)。支払の催促と相殺は、別の意思表示として分けます。
債権の特定
理由どの債権とどの債権を対当額で消すのかが読み取れないと、消滅した範囲が確定しません。発生原因、日付、金額で特定します。
相殺の通知書には、相手方が反論しやすい点があります。互いの債権の弁済期、相手方の債権の存在と金額、相殺が制限されていないかの三点です。通知の前に、これらを自分の側で資料に当たって確かめておきます。ただし、どちらの債権が存在するのか、金額が合っているのかといった争いの当否の判断は、このガイドでは扱いません。
相殺が制限されるとき:契約の定めと法律の制限
相殺には制限があります。まず、当事者が相殺を禁止し、または制限する旨の意思表示をした場合です。この意思表示は、第三者が知り、または重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができます(民法505条2項)。契約書に「いかなる場合も相殺しない」「相殺は書面による事前の同意がある場合に限る」といった定めがあれば、その契約の当事者間では相殺が制限されることになります。
法律による制限もあります。悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務、および人の生命または身体の侵害による損害賠償の債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができません(民法509条)。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでありません。また、差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできませんが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができます(民法511条1項)。
契約書で相殺条項を読むときは、次のことを確認します。相殺ができるのはどちらの当事者か(双方か、一方だけか)。相殺の対象は、その契約から生じた債権に限られるのか、ほかの契約から生じた債権も含むのか。相殺の通知は書面でするのか、いつ効力が生じるのか。相殺を一方だけが行使できる定めは、取引の力関係を反映していることがあるため、片面的になっていないかも確認します。
相殺の通知を電子メールで出すことの可否や、記録の残し方は、メール・LINE・電子契約サービスでの通知と記録のページで扱っています。
債権譲渡の通知:誰が、誰に、何を知らせるか
債権は、原則として譲り渡すことができます(民法466条1項本文)。当事者が債権の譲渡を禁止し、または制限する旨の意思表示(譲渡制限の意思表示)をしたときでも、債権の譲渡は、その効力を妨げられません(同条2項)。ただし、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、または重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができます(同条3項)。債務者が履行をしない場合に、その第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行を催告し、その期間内に履行がないときは、債務者はこの履行拒絶を主張できなくなります(同条4項)。
債権を譲り受ける側は、契約書に譲渡制限の意思表示が書かれていないかを、譲り受ける前に確かめる必要があります。譲渡する側も、制限の定めがある債権を譲渡する場合は、通知の前に債務者との関係を整理しておくほうが、後の紛争を避けやすくなります。
対抗要件について、条文は「譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ」と書いています(民法467条1項)。通知をするのは譲渡人です。譲受人が自分の名前だけで債務者に通知しても、条文が定める通知にはなりません。譲渡契約で、譲受人が譲渡人に代わって通知する権限を持つ定めを置く例もありますが、その定めがある場合でも、通知書に誰の名で出すのか、どの権限に基づくのかが分かるように書く必要があります。
債権譲渡の通知を出す前に確かめる順序
- 1譲渡する債権を特定できるか債権の発生原因となる契約、発生日、金額、弁済期、債務者の名称と住所を書き出します。複数の債権があるときは、債権ごとに特定します。
- 2譲渡を制限する定めがあるか契約書に譲渡禁止や承諾を要する定めがないかを確かめます。譲渡制限の意思表示があっても、譲渡の効力は妨げられません(民法466条2項)が、譲受人が悪意または重過失のときは、債務者は履行を拒めます(同条3項)。
- 3債務者に対する対抗要件を、通知と承諾のどちらで具備するか譲渡人が債務者に通知をするか、債務者が承諾をするかを決めます(民法467条1項)。
- 通知を選ぶ譲渡人が、債務者へ通知書を出す。確定日付を得る方法も決める
- 承諾を選ぶ債務者から承諾書を得る。確定日付のある証書にする方法を決める
- 4債務者以外の第三者に対抗する必要があるか同じ債権が二重に譲渡される、差押えを受けるなどの場面を考えて、確定日付のある証書による通知または承諾にします(民法467条2項)。
- 5通知が債務者に届いたことを残す通知は到達して効力を生じるのが通常です。配達証明などで、到達の日を示せるようにします。
対抗要件の具備は、契約書で「譲渡契約の締結日から一定の日数以内に」などと期限を定めておくことが多い手続です。期限を定める場合は、通知書を出す日ではなく、債務者に届く日をいつにするかを含めて決めます。
流れ図のとおり、債権譲渡の通知では、債権の特定、譲渡制限の有無、通知か承諾かの選択、確定日付、到達の記録の五点を順に決めます。承諾を選ぶ場合は、債務者の承諾書に確定日付のある証書の方式を取ります。債務者が通知の前に譲渡人に対して持っていた事由は、対抗要件具備時までのものは譲受人にも主張できます(民法468条1項)。
確定日付のある証書:内容証明・公証・債権譲渡登記
確定日付とは、証書の作成日付を第三者との関係で争えない日付として、法律が認めたものです。どの方法が確定日付になるかは、民法施行法5条1項が定めています。公正証書のときは、その日付が確定日付になります(1号)。登記所または公証人役場で、私署証書に日付のある印章を押捺したときは、その印章の日付が確定日付になります(2号)。郵便認証司が、内容証明の取扱いに係る認証をしたときは、郵便法58条1号に従って記載した日付が確定日付になります(6号)。
内容証明郵便は、郵便局が文書の内容を証明する取扱いです(郵便法48条)。通知書を内容証明で出すと、通知書の内容と差出しの日付が証明されます。ただし、内容証明は債務者に届いた日を証明するものではありません。通知は、一般に、債務者に到達して効力を生じるものと扱われるため、債務者に届いた日を示すには、配達証明(郵便法47条)を付けるのが通常です。配達証明は、郵便物を配達し、または交付した事実を証明する取扱いです。内容証明の字数・行数、謄本の取扱いなど、郵便の取扱いの細目は、日本郵便の案内の原文で確認が必要です。
確定日付を得る主な方法
内容証明郵便
郵便認証司が内容証明の認証をしたときの日付が確定日付になります(民法施行法5条1項6号)。
- 通知書の内容と差出日が証明される
- 債務者に届いた日は、配達証明で別に示す
- 郵便の取扱いの細目は日本郵便の案内で確認する
公証人役場での日付印・公正証書
公証人役場で私署証書に日付印を押してもらう方法(同項2号)、公正証書にする方法(同項1号)があります。
- 承諾書に確定日付を得る場合にも使える
- 手続の方法や手数料は公証人役場の案内で確認する
債権譲渡登記
法人が金銭債権を譲渡した場合、債権譲渡登記ファイルに登記がされると、債務者以外の第三者については確定日付のある証書による通知があったものとみなされます(動産債権譲渡特例法4条1項)。
- 債務者に対しては、登記事項証明書を交付して通知をするか、債務者が承諾をする(同条2項)
- 対象は法人が譲渡人の場合の金銭債権
確定日付は、債務者以外の第三者との関係で効力を持つ日付です。債務者に対する関係では、通知が届いたこと、または承諾があったことが基本になります。
法人が金銭債権を譲渡する場合は、債権譲渡登記という方法もあります。債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、債務者以外の第三者については、民法467条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなされ、登記の日付が確定日付になります(動産債権譲渡特例法4条1項)。債務者に対しては、譲渡人または譲受人が債務者に登記事項証明書を交付して通知をするか、債務者が承諾をしたときに、債務者についても同様になります(同条2項)。この仕組みは、複数の債権をまとめて譲渡する場面などで使われますが、登記の要件や手続は、法務局の案内で確認する必要があります。ここでは、通知の方式の選択肢として紹介するにとどめます。
通知書・承諾書に書く事項
債権譲渡の通知書には、少なくとも次の事項を書きます。通知書を出す日付、債務者の名称と住所、譲渡人の名称と住所、譲受人の名称と住所。譲渡する債権の表示(発生原因となる契約の名称、契約日、債権の金額、弁済期)。譲渡の日。通知の趣旨(債権を譲渡したこと、以後の支払先を譲受人にすること)。支払先の口座。ここで書くのは事実の通知であり、債務者に対して譲渡の事実と支払先の変更を知らせる文書です。
債権の表示は、他の債権と区別できる程度に具体的に書きます。複数の契約から生じた債権が混在していると、どの債権が譲渡されたのか分からなくなります。契約書の名称、契約日、金額を使い、一覧表を添付する方法もあります。実際の通知書では、契約書に書かれた名称、日付、金額のとおりに、正確に表示します。
債務者の承諾書には、通知を受けた事実と、譲渡を承諾する旨を書きます。承諾書に、債務者が譲渡人に対して持っている抗弁(反対債権や支払拒絶の事由)の有無を記載する例もあります。民法468条1項により、債務者は対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗できますので、承諾の際に、主張できる事由が残っているかどうかを書き残すことは、後の紛争を避ける手立てになります。
契約書に、債権譲渡の対抗要件を具備する義務を置く場合は、通知の期限、方法(確定日付のある証書による通知か、承諾か、債権譲渡登記か)、通知書に記載すべき事項、費用の負担、通知を怠った場合の扱いを書きます。期限は、契約の締結日から一定の日数以内とすることが多く、数字は契約の内容に応じて定めます。対抗要件を具備するまでの間に生じた弁済や相殺の扱いも、あわせて定めておくと、当事者の間の整理がしやすくなります。
確認の問いと理由相殺・債権譲渡の通知を出す前に、自分に問う確認
相殺なら、互いの債務は同種の債務で、双方が弁済期にあるか。
民法505条1項は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合に、双方の債務が弁済期にあるとき、対当額で相殺できると定めます。弁済期が来ていない債務があれば、まだ相殺できないことがあります。
相殺を禁止・制限する契約の定めや、法律の制限はないか。
当事者が相殺を禁止・制限する意思表示をした場合は、第三者が知り、または重大な過失で知らなかったときに限り、その第三者に対抗できます(民法505条2項)。悪意による不法行為などに基づく損害賠償の債務の債務者は、相殺で対抗できない場合があります(民法509条)。
債権譲渡なら、債務者と譲受人の名称と所在、債権の特定に誤りはないか。
通知書の記載が不正確だと、どの債権の譲渡か分からず、対抗要件を具備したと言えなくなるおそれがあります。
確定日付のある証書を、誰がどの方法で取得するか。費用は誰が負担するか。
契約書に、通知の期限、方法、費用の負担が書かれていないと、実行されないまま日数が過ぎることがあります。
債務者が譲渡人に対して持つ反対債権や抗弁はないか。
債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって、譲受人に対抗できます(民法468条1項)。譲渡の前に債務者が主張できる事由があると、譲受人の回収に影響します。
確認の問いは、通知書の文面を決める前に書き出します。
相殺と債権譲渡が交差する場面
債権譲渡の通知を受けた債務者が、譲渡人に対して反対債権を持っているときは、相殺を主張できるかどうかが問題になります。民法468条1項は、債務者は対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗できると定めています。反対債権が対抗要件具備時までに発生していたのか、弁済期はいつかといった点で、相殺の可否は変わります。個別の事案で相殺が認められるかどうかは、このガイドでは判断しません。
実務上は、債権を譲渡する側が、譲渡の前に債務者との間で相殺の可能性を整理しておくこと、譲り受ける側が、債務者の反対債権の有無を譲渡契約の表明保証や確認事項に入れておくことが、通知の準備として行われます。通知書や承諾書の記載事項は、譲渡人と譲受人の間の契約の内容とも整合させておきます。
一つの取引で、相殺の通知と債権譲渡の通知が同時に問題になることもあります。その場合は、どちらの通知も効力の生じる時点が到達にかかっている点を意識して、順序と日付を整理します。相殺の通知が先に届いて債権が消滅していれば、その後に譲渡の通知を出しても、消えた債権は譲渡できません。通知を出す順序は、書き出した日付で確認します。
相殺・債権譲渡の通知のチェックリスト
- 自分の債権と相手方の債権を、発生原因・日付・金額で特定した。
- 相殺の通知に、条件や期限を付けていない。
- 相殺を制限する契約の定めと、法律上の制限を確認した。
- 債権譲渡の通知書に、譲渡人、譲受人、債権の表示、譲渡日、支払先の変更を記載した。
- 確定日付のある証書による通知または承諾にし、取得の方法を決めた。
- 債務者に届いた日を示す記録(配達証明など)を残す手順を決めた。
相殺・債権譲渡の通知で起きがちなこと
相殺と債権譲渡の通知で起きがちなことは、方式の誤りと、記録の不足に集約されます。
相殺・債権譲渡の通知で起きがちなこと
- 支払の催促と相殺を同じ文にして、「支払わなければ相殺する」と条件付きの書き方にしてしまう。
- 相殺する債権の発生原因や金額が特定されず、何と何を消したのかが後から確定できない。
- 譲渡契約書に通知の義務は書いてあるが、確定日付の取り方や期限が書かれておらず、通知が遅れる。
- 債務者への通知書は出したが、内容証明の日付を確定日付として使えると知らず、別の方法で手間をかける。
- 譲渡人ではなく譲受人が自分の名で通知を出し、条文が求める譲渡人からの通知になっていない。
- 債権譲渡の通知を出したが、債務者が通知の前に譲渡人に対して持っていた事由(反対債権など)を考慮していない。
どれも、条文が方式として決めていることを、通知書の文面や出し方に反映できていないときに起きます。通知を出す前に、方式、特定、到達の三点を確認する習慣をつけておくと、多くは防げます。
よくあるご質問
相殺の通知は、内容証明郵便で出さなければいけませんか?
相殺は当事者の一方から相手方に対する意思表示でし、方式の定めはありません(民法506条1項)。内容証明で出す必要はありません。ただし、相殺した債権の特定と、通知が相手方に届いた日が後から問題になるため、書面で出し、配達の記録が残る方法を選ぶ例が多くあります。契約書に相殺の通知の方式の定めがあれば、それに従います。
「期限までに支払わなければ相殺する」という通知は有効ですか?
相殺の意思表示には、条件または期限を付けることができません(民法506条1項後段)。そのため、「支払わなければ相殺する」という条件付きの通知は、相殺の意思表示としては成り立ちません。相殺をするなら相殺の意思表示そのものを書き、残額の支払の催促は別の文として書きます。
債権譲渡の通知は、譲受人が出してもよいですか?
民法467条1項は「譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ」対抗できないと定めています。条文上、通知をするのは譲渡人です。譲渡契約で、譲受人が譲渡人に代わって通知する権限を持つと定める例はありますが、その場合でも、誰の名で、どの権限に基づく通知なのかを通知書に明確に書く必要があります。
内容証明郵便の日付は、確定日付になりますか?
郵便認証司が内容証明の取扱いに係る認証をしたときは、郵便法58条1号に従って記載した日付が確定日付になります(民法施行法5条1項6号)。内容証明は文書の内容を証明するもので(郵便法48条)、債務者に届いた日を証明するものではないため、届いた日を示すには配達証明(同法47条)を付けるのが通常です。郵便の取扱いの細目は日本郵便の案内の原文で確認が必要です。
債権譲渡禁止の定めがある契約の債権は、譲渡できませんか?
譲渡制限の意思表示があっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられません(民法466条2項)。ただし、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、または重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は履行を拒むことができます(同条3項)。譲受人が相当の期間を定めて譲渡人への履行を催告し、その期間内に履行がないときは、この履行拒絶を主張できなくなります(同条4項)。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の通知書の有効・無効や、争いの当否の判断は扱っていません。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。郵便の取扱いの細目は、日本郵便の約款・取扱案内の原文で確認が必要です。参考: e-Gov法令検索 / 日本郵便 / 法務省 / 消費者庁