催告で時効は止まるのか|完成猶予・更新・協議の合意の整理

催告は、時効の完成を6か月猶予するだけです。その間に、協議の合意、相手方の承認、裁判上の請求などの手続のいずれに進むかを決めておく必要があります。

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請求書や内容証明を送っていれば時効は大丈夫、という理解は誤りです。催告の効果は6か月の猶予にとどまり、再度の催告には効力がありません(民法150条)。

このページの要点

  • 催告は、その時から6か月、時効の完成を猶予するだけで、時効は更新されない。猶予の間の再度の催告に効力はない(民法150条)。
  • 完成猶予(先送り)と更新(新たに進行)は別の効果。協議を行う旨の合意は書面(電磁的記録を含む)でしなければ効力がなく、催告と重ねて猶予を延ばすことはできない(同151条)。
  • 権利の承認(一部弁済、分割払の約束、債務の確認書など)があると、時効は新たに進行を始める(同152条)。書面を受領しただけでは承認とは整理されないのが一般的。
  • 債権は、知った時から5年、行使できる時から10年で時効消滅する(民法166条1項)。2020年4月1日より前に生じた債権には経過措置があり、改正前の規定の確認が必要。

催告をしても、時効は「止まる」のではなく完成が6か月猶予されるだけ

請求書や催告書を送ったから、時効は大丈夫だと考えている方は少なくありません。しかし、民法の定めでは、催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間、時効は完成しない、とされているだけです(民法150条1項)。つまり、催告は時効の完成を6か月先送りするにとどまり、時効の期間がゼロに戻る(更新される)わけでも、催告を繰り返せば猶予が延び続けるわけでもありません。催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告には、完成猶予の効力がないからです(同条2項)。

このことから、催告書を出すときは、次の二つを同時に考える必要があります。一つは、6か月の猶予の間に、時効を確実に進めなくする別の手段(裁判上の請求などの手続に進む、書面で協議を行う旨の合意をする、相手方に債務を承認してもらう)を取ること。もう一つは、そもそも時効の完成まで残りどれくらいあるのかを確かめることです。ここでいう「時効」は、このページでは、債権が一定の期間行使されないために消滅する「消滅時効」を指します。

なお、時効の期間が満了すれば、債権が自動的に消えるわけではありません。時効は、当事者(消滅時効では、保証人、物上保証人、第三取得者その他、権利の消滅について正当な利益を有する者を含みます)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができません(民法145条)。援用とは、時効の利益を受けることを相手方に主張することです。時効の完成が近いときに焦って催告書を出すより前に、この仕組みを理解しておくと、書面の位置づけが整理しやすくなります。

時効に関わる三つの言葉

完成猶予

時効が完成する時期を先送りする

  • 猶予の事由が続く間、時効は完成しない
  • 猶予の期間が終わると、残っている期間が再び進み始める
  • 催告(民法150条)、協議を行う旨の合意(151条)、裁判上の請求(147条)、仮差押え(149条)など

更新

時効の期間が新たにゼロから進み始める

  • 更新が生じると、それまでの経過期間はリセットされる
  • 権利の承認があったとき(152条1項)、確定判決などで権利が確定したとき(147条2項)など
  • 催告そのものは更新の事由ではない

援用

時効の完成の利益を受けると主張する

  • 時効の完成だけでは足りず、当事者が援用して初めて裁判所が時効によって裁判できる(145条)
  • 援用の手続や可否は、事案ごとの判断になる
  • このページでは、援用そのものの判断には立ち入らない

催告書は、この中の「完成猶予」の入口にすぎません。時効が完成していない権利を守るための書面であり、完成した後の権利を取り戻す書面ではありません。

完成猶予と更新の事由を一覧で見る

時効の完成猶予や更新が生じる事由は、民法の複数の条文に分かれて定められています。催告だけを切り取ると全体像を見失いやすいため、まず、主な事由を一覧にします。ここでは、手続の中身そのものではなく、書面や通知がどの条文に結びつくかを整理することが目的です。

時効の完成猶予・更新の主な事由

事由条文効果書面・通知との関わり
裁判上の請求、支払督促、調停など民法147条1項その事由が終了するまで時効は完成しない(確定せずに終了した場合は終了から6か月)催告書の次の段階。手続の中身は書面作成の範囲外
確定判決などによる権利の確定民法147条2項事由が終了した時から時効が新たに進行する(更新)手続の結果として生じる
仮差押え・仮処分民法149条事由が終了した時から6か月を経過するまで時効は完成しない手続の中身は書面作成の範囲外
催告民法150条催告の時から6か月間、時効は完成しない催告書。再度の催告には猶予の効力がない
協議を行う旨の合意民法151条書面(電磁的記録を含む)での合意により、一定の時まで時効は完成しない協議の合意書。期間や再度の合意に限度がある
権利の承認民法152条承認の時から時効が新たに進行する(更新)債務の承認書、一部弁済、分割払の約束など

表のうち、催告書や契約書の関係で扱えるのは、催告、協議を行う旨の合意、権利の承認の三つです。裁判上の請求や仮差押えなどの手続は、このガイドの対象外であり、手続の中身は扱いません。ただし、催告の6か月が経過するまでに、これらの手続に進むのかどうかを決めておく必要があるので、手続の存在だけは知っておく必要があります。

催告の6か月|いつから数え、その間に何をするか

催告による完成猶予は、「その時から六箇月を経過するまでの間」とされています(民法150条1項)。催告の「時」は、催告の意思表示が相手方に到達した時と考えるのが一般的です。催告も、相手方に届いて初めて意味を持つ通知として整理されるためです。したがって、催告書を発送した日ではなく、到達日を後から確認できる送り方(配達の記録が残る方法)が重要になります。

6か月の数え方は、民法の期間の計算の規定に従います。月によって定めた期間は暦に従って計算し(民法143条1項)、期間の初日は算入しません(同140条)。たとえば、催告が1月10日に到達したとすると、その日は算入せず、翌日の1月11日を起算日として、6か月後の応当する日(7月11日)の前日である7月10日の終了をもって満了する、という計算になります(日付は例です)。ただし、時効の完成の日付は、時効の起算日や期間、援用の有無にもかかわるため、具体的な日付の判断には、契約の内容や債権の発生時期の確認が必要です。

催告から6か月の流れ(架空の日付ラベル)

  1. 時効の完成前
    時効の完成まで残りの期間を確認する催告書を出す前に、債権の発生時期と時効期間を確かめる。猶予が効くのは、時効が完成する前の催告に限る
  2. 催告の到達日
    催告が相手方に到達するこの時から6か月、時効は完成しない(150条1項)
  3. 猶予の途中
    次の手を決める再度の催告は猶予の効力がない(150条2項)。この間に、裁判上の請求などの手続、書面による協議の合意、相手方の承認のいずれかを進める
  4. 6か月の経過
    猶予が終わる何も手を打たなければ、猶予の終了後に、残っていた時効期間が再び進む。完成が近ければ、ここで時効が完成しうる

「残りの期間」が長く残っているうちに催告するのと、完成の直前に催告するのとでは、使える時間が大きく違います。

この図で押さえておきたいのは、催告は一度しか使えない「6か月の時間稼ぎ」だという点です。その間に何もしないまま経過すれば、猶予は終わります。催告書を出した後は、6か月の中で、①協議を行う旨の合意をする、②相手方に債務を承認してもらう、③手続に進む、のいずれを選ぶかを早めに決め、その日程を逆算しておきます。請求の段階の組み立て方は、請求書から内容証明までで整理しています。

書面による協議の合意|完成猶予をもう一段つなぐ方法

催告の猶予は6か月しかありませんが、当事者間で話し合いが続いている場合は、「権利についての協議を行う旨の合意」を書面でしておくことで、時効の完成を猶予できます(民法151条1項)。この合意は、書面でしなければ効力を生じず、口頭の合意や、単に話し合いを続けているというだけでは、完成猶予の効力は生じません。合意が書面ではなく、その内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録)でされたときは、書面によってされたものとみなされます(同条4項)。

完成猶予が続く期間は、次のうち最も早い時までです(同条1項各号)。第一に、合意があった時から1年を経過した時。第二に、合意において協議を行う期間(1年に満たないものに限ります)を定めたときは、その期間を経過した時。第三に、当事者の一方から相手方に対して、協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6か月を経過した時です。この協議続行の拒絶の通知も、電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなされます(同条5項)。

書き方の例協議を行う旨の合意書の記載例(一般的な例)

  1. 甲及び乙は、甲が乙に対して有する、令和○年○月○日付○○契約に基づく代金債権(以下「本件債権」という。)の支払について、その方法及び時期に関する協議を行うことに合意する。
  2. 前項の協議を行う期間は、本合意の日から○か月間とする。
  3. 甲又は乙は、前項の期間中であっても、相手方に対し、書面(電磁的記録を含む。)により、協議の続行を拒絶する旨を通知することができる。
  4. 本合意は、民法第151条第1項の規定による時効の完成猶予の効力を生じさせることを目的の一つとするものであり、本件債権の存在又は不存在を、甲乙のいずれも認める趣旨のものではない。

最後の項は、協議に応じることが債務の承認と読まれるのを防ぐための例です。承認に当たらないとする旨を明記するかは、双方の合意で決めます。

協議の合意には、いくつかの限度があります。まず、協議の合意によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の合意にも、同じ完成猶予の効力があります。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができません(民法151条2項)。次に、催告によって時効の完成が猶予されている間にされた協議の合意は、完成猶予の効力を持たず、反対に、協議の合意による猶予の間にされた催告についても、同様です(同条3項)。つまり、催告と協議の合意は、一方の猶予の間に他方を重ねて、期間を延ばすことはできません。

こうした仕組みから、時効が近い債権について交渉を始める場合、先に催告をするのか、先に協議の合意を結ぶのかを、順序として選ぶ必要が出てきます。協議の合意は相手方の同意が必要ですが、期間を最長1年(またはそれより短く定めた期間)確保でき、再度の合意で延長もできます。他方、催告は相手方の同意なく一方的に出せますが、猶予は6か月で、再度の催告は無効です。どちらが適するかは、相手方との関係や、残りの時効期間によって変わります。

承認による更新|一部弁済や分割払の約束が持つ意味

時効を確実に進めなくするもう一つの方法は、相手方に権利を「承認」してもらうことです。時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始めます(民法152条1項)。承認は、相手方が債務の存在を認める行為で、書面による債務の承認書のほか、一部の弁済、支払の猶予を求める申し出、分割払の約束などが、承認に当たる場合があります。なお、承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しないとされています(同条2項)。

承認は、請求する側が相手方の承認を引き出す書面を作るという形でも使われます。たとえば、債務の残額を確認し、相手方が署名または記名して返送する「債務確認書」や、分割払の合意書です。これらの書面を作るときは、債務の内容(どの契約に基づく、いくらの債務か)を特定し、承認の趣旨が読み取れるようにします。一方で、書面を受領しただけでは、承認には当たらないと整理されるのが一般的です。催告書や請求書を相手方が受け取ったという事実は、それだけでは、債務があることを認めたことを意味しません。この違いは、通知書を受け取ったとき・届かないとき・間違えたときで、受け取る側の目線から整理しています。

書き方の例(一般的な例) 債務の確認書の書き方

債務の特定

よくある書き方「未払分についてお支払いします。」
整えた書き方「令和○年○月○日付○○契約に基づく代金○円(税込)のうち、未払の残額○円について、支払う債務があることを確認します。」

理由何の債務の承認なのかが特定されていないと、承認の範囲が曖昧になる。

支払の約束

よくある書き方「できるだけ早く支払います。」
整えた書き方「前項の残額を、令和○年○月○日限り、下記の口座へ入金して支払います。」

理由期限と方法が特定されていると、後の請求の根拠になる。

異議の有無

よくある書き方記載なし
整えた書き方「この債務の存在について、異議はありません。」

理由債務の存在を争わない趣旨を明示しておくと、承認の趣旨が明確になる。ただし、相手方が内容に納得して署名することが前提。

ここで注意が必要なのは、承認を引き出すことと、相手方に不適切な圧力をかけることの線引きです。承認書への署名を、期限を切って強く迫ったり、事実と違う内容を認めさせたりする進め方は、後で承認の有効性が問題になるだけでなく、書面の表現が相手方を畏怖させるものとなるおそれもあります。通知書で書いてよい範囲は、通知書に書いてよいこと・書いてはいけないことで整理しています。

時効の期間と起算点|どの債権に何年かを確かめる

催告や協議の合意を考える前提として、そもそも自分の債権の時効期間が何年かを確かめます。債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法166条1項)。事業の取引で生じた代金や報酬の債権は、通常、権利を行使できることを知った時(支払期日が決まっていれば、期日の到来を知った時)から5年という形になることが多く、契約書に支払期日があれば、起算点を確認しやすくなります。

主な債権の時効期間の整理(現行の民法)

債権の種類時効期間条文
一般の債権(契約に基づく代金、報酬など)知った時から5年、または行使できる時から10年民法166条1項
人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権(債務不履行)行使できる時から20年(「知った時から5年」の部分は同じ)民法167条(166条1項2号の読み替え)
不法行為による損害賠償請求権損害及び加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年民法724条
人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権損害及び加害者を知った時から5年、または不法行為の時から20年民法724条の2、724条2号
確定判決などで確定した権利10年(10年より短い時効期間のものも10年。確定時に弁済期が来ていない債権を除く)民法169条

債権の時効が「知った時から5年」と「行使できる時から10年」の二本立てになっている点は、整理しておくと便利です。前者は債権者の認識を基準にする考え方で、後者は客観的に権利を行使できるようになった時を基準にする考え方であり、どちらか早く満了する方で、債権は消滅します。事業の取引では、支払期日が契約書や請求書に書かれているため、権利を行使できる時と、それを知った時がほぼ重なる場合が多くなります。他方、期限の定めがない債務では、債権者がいつでも請求できる状態にあることになるため、起算点は、契約の成立の時や、債務の発生の時として検討することになります。具体的な起算点は、契約の内容と事実の経過に依存するので、断定せずに、資料を時系列に並べて確認します。

表は現行の民法の整理です。民法の債権法改正(2020年4月1日施行)より前に債権が生じた場合や、その原因となる法律行為が施行日より前にされた場合は、時効の期間、援用、中断・停止の事由について、なお従前の例によるとされています(改正法の附則10条1項・2項・4項)。そのため、古い取引から生じた債権については、現行の規定ではなく、改正前の民法の規定を確認する必要があり、このページの表をそのまま当てはめることはできません。具体的な債権の時効が何年か、すでに完成していないかの判断は、このガイドの対象外です。

起算点の確認には、資料の集め方が重要になります。契約書で支払期日がどう決まっていたか、請求書の発行日、納品や検収の日、入金の履歴、最後に相手方から連絡があった日などを時系列に並べると、時効の起算点と完成の時期の目安が見えてきます。また、一部弁済や承認に当たる書面があれば、その時点から時効が新たに進行している可能性があるため、それも時系列に加えます。

確認の問いと理由時効の確認で自分に問う点

  1. 債権が生じたのはいつか。2020年4月1日より前ではないか

    前であれば、時効の期間などは改正前の規定による場合があり、現行の表は当てはまりません。

  2. 支払期日が決まっていたか。期日はいつか

    期日が起算点を考える出発点になるため、契約書や請求書で確かめます。

  3. 最後の入金や承認にあたる書面はいつか

    一部弁済や債務の確認は、承認として時効が新たに進行する起点になりえます。

  4. すでに催告や協議の合意をしていないか

    催告の猶予の間の再度の催告や、猶予の間の協議の合意は、完成猶予の効力を持たない場合があります。

  5. 相手方との契約書に、時効に触れる定めはないか

    契約書の存続条項が、法定の時効期間まで一定の義務を存続させる旨を定めていることがあります。時効期間そのものを契約で短縮・延長できるかは、別途確認が必要です。

6か月の間の選択肢を整理する|手続の地図と、到達の記録

催告書を出したあとの6か月は、短いようで、実際には動きにくい期間です。相手方から返事が来ない、話し合いが長引く、必要な資料の整理に時間がかかる、といった事情で、気づけば猶予の終わりが近づいていることがあります。そこで、催告の時に、その後の分かれ道をあらかじめ地図にしておくと、日程の管理が楽になります。ここでは、書面や通知で対応できる範囲を中心に、手続の存在だけを示します。手続の中身そのものは、このガイドの対象外です。

催告のあと、6か月の間の分かれ道

  1. 1
    催告が相手方に届いたことを確認する到達の日付が、後から示せる記録になっているかを確認します。猶予の起点と終点を、手帳やカレンダーに書き込みます。
    • 到達の記録がある次へ進む
    • 到達が確認できない別の経路で再度知らせる。ただし、再度の催告には猶予の効力がない点に注意する
  2. 2
    相手方の反応を見る返事があったか、支払や分割の申し出があったか、連絡が途絶えたかを整理します。
    • 支払・分割の申し出がある債務の確認書や分割払の合意書にして、承認の内容を書面に残す
    • 話し合いに応じる姿勢がある協議を行う旨の合意を書面にして、協議の期間を特定する
    • 反応がない・応じない猶予が終わる前に、裁判上の請求などの手続に進むかどうかを決める
  3. 3
    猶予の終わりの前に、期限を逆算する猶予の終わりの日から逆算して、手続に必要な準備の期間を確保します。直前になってから動くと、選べる手段が限られます。
  4. 4
    猶予が終わった場合を想定する何も手を打たなかった場合に、時効がいつ完成しうるのかを把握します。完成した場合に、相手方が援用するかどうかは、相手方の判断です。

分かれ道ごとに必要な書面(債務の確認書、協議の合意書など)の例は、前の節で示したとおりです。

この地図を使うときに大切なのは、「どの書面で、どの条文の効果を狙っているのか」を、書面の作成の時点で意識しておくことです。催告書は催告の効果(民法150条)を、協議の合意書は完成猶予の効果(同151条)を、債務の確認書は承認の効果(同152条)を、それぞれ狙う書面であり、書き方も、目的に応じて変わります。一つの書面にこれらを混ぜると、どの効果を狙っているのかが分からなくなり、催告と協議の合意が重なったときのように、思わぬ効力の制限(同151条3項)に当たることもあります。

契約書を作る側の視点では、時効に触れる条項の扱いも確認しておくと役立ちます。契約書には、契約終了後も一定の義務を存続させる存続条項が置かれ、損害賠償請求権は法定の時効期間の満了まで存続する、という書き方がされることがあります。このような条項は、時効期間そのものを変えるものではなく、条項に基づく義務や権利が契約終了後もなくならないことを確認するものです。時効の期間を契約で短くしたり延ばしたりする定めを置く場合は、その定めが有効かどうかが別に問題になるため、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。契約書の条項の組み立ては、契約書の「通知」条項の作り方で、通知先や方法を中心に扱っています。

起きがちなこと|催告と時効をめぐる場面

場面別の起きがちなこと

  • 催告書を送ったことで時効が止まったと考え、6か月の間に次の手を打たず、猶予が終わってしまった
  • 催告を繰り返し送れば、そのたびに猶予が延びると考えていた(再度の催告には猶予の効力がない)
  • 話し合いが続いているので大丈夫と思っていたが、書面での協議の合意はなく、時効の完成猶予が生じていなかった
  • 協議の合意をしたが、書面ではなく、口頭やチャットのやりとりだけだった
  • 催告の猶予の間に協議の合意を結び、猶予が重なって延びると考えていた(効力が生じない場合がある)
  • 催告書の発送日と到達日を取り違え、猶予の起点を誤って把握していた
  • 債務の確認書の内容が債務を特定しておらず、何の債務を承認したのかが曖昧だった
  • 古い取引の債権に、現行の時効期間をそのまま当てはめて検討していた(経過措置の確認が必要)
  • 時効の完成が近づいてから、初めて催告書を出すことを考えたため、猶予の間に取れる手段が限られた
  • 相手方が催告書を受領したことを、債務の承認と同じものとして扱っていた

よくあるご質問

内容証明郵便で請求すれば、時効は止まりますか。

止まるのではなく、完成が猶予されるにとどまります。催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間、時効は完成しません(民法150条1項)。内容証明郵便は、催告の内容と出した事実を示しやすくする手段ですが、それだけで時効が更新されるわけではありません。6か月の間に、裁判上の請求などの手続、書面による協議の合意、相手方の承認のいずれかを進めることが必要になります。

催告を何度も送れば、6か月ごとに時効を延ばせますか。

延ばせません。催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、完成猶予の効力を有しないとされています(民法150条2項)。最初の催告の時から6か月が猶予の限度です。

メールで「話し合いたい」と伝えれば、協議の合意になりますか。

協議を行う旨の合意は、書面でされなければ完成猶予の効力を生じません(民法151条1項)。その内容を記録した電磁的記録でされたときは、書面によってされたものとみなされます(同条4項)。メールの文面が、権利についての協議を行う旨の合意として読めるものかが問題になるため、合意書の形で、協議の対象となる権利と、協議の期間を特定して残しておく方法が確実です。

相手方が一部だけ支払ってきたら、時効はどうなりますか。

権利の承認があったときは、時効はその時から新たに進行を始めます(民法152条1項)。一部の弁済が承認に当たる場合があるため、一部弁済の事実と日付を記録しておくと、時効の起算点の整理に役立ちます。具体的に承認に当たるかどうかは、事情ごとの判断になります。

古い取引の債権でも、現行の時効期間(5年・10年)が当てはまりますか。

2020年4月1日の民法改正より前に債権が生じた場合や、その原因となる法律行為が施行日より前にされた場合は、時効の期間、援用、中断・停止の事由は、なお従前の例によるとされています(改正法の附則10条)。そのため、古い債権は、改正前の規定を確認する必要があります。

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