催告と解除の順序|相当の期間・無催告解除・同じ書面で出すとき

解除の基本は、相当の期間を定めた催告、期間の経過、解除の意思表示の三段です。催告と解除を一つの書面にまとめる場合は、解除が条件付きなのかを書面から読み取れるようにします。

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解除の意思表示は撤回できません(民法540条2項)。催告の段階では引き返せますが、解除が届いた時点で契約を元に戻すには、新たな合意が必要になります。

このページの要点

  • 解除の原則は、相当の期間を定めた催告、期間の経過、解除の意思表示の三段(民法541条)。解除の意思表示は撤回できない(同540条2項)。
  • 催告によらず直ちに解除できる場合は民法542条に5類型ある。契約書の「催告なし」の条項と、どちらの根拠で解除するのかを書面に明示する。
  • 催告と解除を同じ書面で出すときは、解除が停止条件付きなのか、期間経過後に改めて通知するのかを書面から読み取れるようにする。慎重に進めるなら、催告と解除通知を別々の書面にする。
  • 相手方が複数名のときは、解除は全員に対して行う(民法544条1項)。請負の注文者の任意解除(641条)のように、立場に合わない根拠条文を引かない。

解除の基本の形は「催告→期間の経過→解除の意思表示」の三段

契約の相手方が約束を守らないとき、契約を解除して関係を終わらせたい場面があります。民法の基本の形は、相手方が債務を履行しない場合に、こちらが相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときに、契約を解除できる、というものです(民法541条本文)。ここには三つの動作が含まれています。一つ目は催告(期間を定めて履行を求めること)、二つ目は期間の経過(何も履行されないまま期間が過ぎること)、三つ目は解除の意思表示(契約を解除するという旨を相手方に伝えること)です。

三つ目の解除の意思表示は、相手方に対してするものとされています(民法540条1項)。そして、一度した解除の意思表示は撤回することができません(同条2項)。つまり、催告の段階ではまだ引き返す余地がありますが、解除の意思表示が相手方に届いた時点で、契約を元に戻すことはできず、再び取引を続けたいなら、新たな合意が必要になります。この性質があるため、催告と解除は、同じ書面に書くか、別々の書面にするかで書き方が変わります。この点は後の節で詳しく見ます。

解除までの基本の順序

  1. 1
    不履行の事実を確定する何が、いつまでに履行されるはずだったのか、契約書のどの条項に基づくのかを確認します。
    • 履行の期限が過ぎている次へ進む
    • 期限がまだ来ていない履行期の到来を待つ。履行拒絶が明らかな場合は後の節の「催告なし」の類型を確認する
  2. 2
    催告をする相当の期間を定めて、履行を求める書面を相手方に出します。
    • 契約書に催告の方法・期間の定めがあるその定めに従う
    • 定めがない相当の期間を自分で定める
  3. 3
    期間の経過を確認する期間の末日が過ぎたこと、その間に履行がなかったことを確認します。一部でも履行があれば、不履行が軽微かどうかの検討が必要になります。
  4. 4
    解除の意思表示をする契約を解除する旨を、相手方に書面で通知します。到達した時に効力が生じ、撤回できません。
  5. 5
    解除後の処理に進む原状回復、返還、清算、損害賠償を求める場合は、その内容を整理して書面にします。

催告と解除は、別々の書面にしても、一つの書面にまとめても構いません。いずれの場合も、相手方に届いた時に効力が生じる点は変わりません。到達の考え方は、通知はいつ「届いた」ことになるかで整理しています。

なお、この順序はあくまで民法の原則であり、契約書に別の定めがあればそれが先に働きます。たとえば、契約書が「違反があったときは、書面により是正を求め、一定の営業日以内に是正されないときは解除できる」と定めていれば、民法の「相当の期間」の代わりに、その日数が催告期間として使われます。同じ契約書の別の条に「次の事由があるときは催告なしに直ちに解除できる」という定めがあれば、その事由については、催告を経ずに解除できます。契約書が民法の原則を修正している範囲を、最初に確認することが大切です。

催告の中身|「相当の期間」と「軽微な不履行」

催告は、単に「支払ってください」と伝えるだけの書面ではなく、解除の前提となる書面として、いくつかの要素を備える必要があります。一般に、催告書には、①何の契約についての債務か、②どの債務が履行されていないのか、③いつまでに履行してほしいのか、④履行されなかったときにどうするのか、の四つが読み取れるように書きます。①②は契約の特定と不履行の事実、③は催告の期間、④は解除の予告にあたります。

「相当の期間」は何日か

民法は、催告で定める期間を「相当の期間」としています。何日が相当かは、債務の内容や、履行に必要な準備の程度によって変わり、法律に一律の日数の定めはありません。金銭の支払であれば比較的短い期間でも足りる場合が多い一方、物を製造して引き渡す債務や、一定の作業を完了させる債務では、履行の準備に時間を要するため、短すぎる期間が不相当と評価される可能性が高まります。

期間が短すぎたときに、解除の効力がどうなるかは、争いが生じやすい部分です。実務では、日数を定めずに「速やかに」とだけ書くことは避け、契約書に催告期間の日数の定めがあればその日数を、なければ債務の内容に照らして余裕をもった日数を、固定の日付か到達後の日数のどちらかで特定します。期間の数え方は、更新を断る・解約を申し入れる通知の期間の数え方で扱っている民法の期間の計算(初日不算入、末日の終了で満了)に従って数えます。

確認の問いと理由催告をする前に確かめる問い

  1. 履行が遅れているのは、こちらに原因がないか

    債務の不履行がこちら(債権者)の責めに帰すべき事由によるときは、催告による解除も催告によらない解除もできません(民法543条)。こちらが資料や承諾を出していないために相手方が進められない場合は、解除の根拠が崩れます。

  2. 不履行の程度は、契約全体に影響するものか

    催告期間が過ぎた時点での不履行が、その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微なときは、解除できません(民法541条ただし書)。何が軽微かは事案によりますが、全体のうちごく一部の遅れや、付随的な義務の違反は、この点が問題になりやすくなります。

  3. 催告の期間は、契約書の定めと合っているか

    契約書に催告期間の日数があるのに、それより短い期間で催告すると、期間が不足していたことを理由に、解除の効力を争われる余地が生じます。

  4. 履行の内容は、書面から特定できるか

    「契約に違反しているので是正してください」だけでは、何をすれば催告期間内に履行したことになるのかが分かりません。金額、数量、作業の内容など、履行の内容を特定します。

  5. 相手方は一人か、複数か

    当事者の一方が数人ある場合は、解除は、その全員から又はその全員に対してのみすることができます(民法544条1項)。一人にだけ解除の通知を出すと、解除の効力が生じない可能性があります。

最後の問いは見落とされがちです。契約の相手方が複数名(共同で借りている、共同で委託を受けているなど)の場合、解除の意思表示は、全員に対して出す必要があります。また、こちらが複数名のときは、全員が解除の意思表示を行います(同条1項)。解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する(同条2項)ため、全員の足並みを揃える必要があります。複数名が当事者のときの通知先の定め方は、契約書の「通知」条項の作り方で扱っています。

催告によらない解除|五つの類型と、契約書の「催告なし」条項

催告をしても意味がない場面や、催告を待っていては契約の目的を達成できない場面では、民法は催告を省いて直ちに解除できる類型を定めています(民法542条)。契約書にも、「催告を要せず直ちに解除できる」という条項が置かれることが多く、民法の類型と契約書の条項の関係を整理しておくと、どちらの根拠で解除するのかを書面で明示できます。

民法542条1項の類型(催告によらない全部の解除)

号場面の整理具体的な読み方の例
1号債務の全部の履行が不能であるとき引き渡すべき物が滅失した、提供すべき役務がもはや提供できない、など
2号債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき「支払わない」「やらない」と明確に伝えてきた場合。曖昧な発言だけでは足りない場合がある
3号債務の一部の履行が不能(又は一部の履行拒絶)で、残る部分のみでは契約をした目的を達することができないとき全体の一部の履行が不能で、残りだけでは契約の意味がなくなる場合
4号特定の日時又は一定の期間内に履行しなければ契約の目的を達することができない場合で、その時期を経過したとき催事の日までに納めるべき物が間に合わなかった場合など
5号前各号のほか、催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかなとき催告しても履行の見込みがないことが客観的に明らかな場合

表の五つに加えて、一部だけの解除が認められる類型もあります。債務の一部の履行が不能であるとき、又は債務者が一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、催告をせずに契約の一部を解除できます(民法542条2項)。いずれの類型も、条文の「明確」「明らか」といった言葉が示すとおり、解除する側が、その事情を後から示せる状態にしておく必要があります。相手方の履行拒絶なら、拒絶を示すメールや書面を保存しておきます。

契約書に「催告なし」の条項があるとき

契約書には、民法の類型に加えて、「次の事由があるときは、相手方は催告なしに直ちに契約を解除できる」という条項が置かれ、破産手続開始の申立て、差押え、重大な義務違反、秘密保持義務違反などが列挙されることが一般的です。このような条項を使って解除する場合は、書面に「契約書第○条第○項に基づき」と書き、どの事由に該当するのかを事実とともに特定します。一方で、契約書に無催告解除の条項があっても、書かれた事由に実際に該当するか、該当の程度が軽微でないかが争いになることがあります。争いに備えて、民法541条による催告を経て解除する道も残しておくか、民法542条の類型にも該当する旨を予備的に書く方法があります。予備的な書き方は、取消し・解除・解約・撤回・相殺・更新拒絶の違いで扱っています。

書き方の例(一般的な例) 契約書の解除条項の書き分け

催告の要否

よくある書き方「相手方が本契約に違反したときは、解除できる。」
整えた書き方「相手方が本契約に違反し、書面による是正の催告を受けた日から○営業日以内に是正されないときは、書面により解除できる。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、催告なしに直ちに解除できる。」

理由催告が必要な場合と不要な場合を区別し、どの場合にどの手続が必要なのかを読み手が判断できるようにするため。

催告の方法

よくある書き方「催告のうえ」とだけ書く
整えた書き方「催告は書面(電子メールを含む)により、第○条の通知先に宛てて行う。」

理由催告の方法が書かれていないと、電話やメールの催告が有効かが争いになる。通知先と方法を条項で特定する。

催告期間の日数

よくある書き方「相当期間」
整えた書き方「到達の日の翌日から起算して○営業日」

理由民法の「相当の期間」では、日数が個別の事情の評価に委ねられるため、契約書で数字を決めておくと争いを減らせる。

催告と解除を同じ書面で出すとき|三つの出し方の比較

催告と解除の意思表示を、一つの書面にまとめるか、別々の書面にするかは、実務でよく迷われる点です。一つの書面で「期間内に履行がないときは、本契約を解除します」と書く方法は広く見られ、手間は少なくなりますが、書面の読み方によって、解除の効力がいつ生じるのかが分かれる余地があります。たとえば、期間が経過した時に別段の通知なく解除の効力が生じるのか、期間の経過後に改めて解除の通知を出す必要があるのかは、書き方次第です。ここでは、三つの出し方を比較します。

催告と解除の三つの出し方

A 催告のみ→後日、解除通知

最も慎重な出し方

  • 催告書では「履行がないときは次の手続を検討する」程度にとどめ、解除の意思は示さない
  • 期間の経過後に、改めて解除通知書を出す
  • 解除の意思表示が一度だけになり、効力の発生時点が明確
  • 手間と時間がかかり、二通の書面の整合性を保つ必要がある

B 催告と停止条件付きの解除を同じ書面で

手間を減らしやすい出し方

  • 「期間内に履行がないときは、この期間の経過をもって、本契約を解除する」と明記する
  • 期間の経過で別段の通知なく解除の効力が生じる、という整理になる
  • 期間内に一部の履行があったときなど、条件の成否が争われる余地がある
  • 解除は撤回できないので、条件付きの意思表示であっても慎重に書く

C 契約書の条項に基づく通知

契約書に定めがある場合

  • 契約書の解除条項に、催告の方法と期間、解除の方法が定められている場合は、その定めに従う
  • 書面に条項番号を書き、条項に合致した手続を踏んでいることを示す
  • 条項の手続を踏んでいないと、条項に基づく解除の効力が争われる

どの出し方にも一長一短があります。事案の性質、相手方との関係、期間の長さ、契約書の定めによって選び方が変わります。

Bの出し方では、書き方に注意が必要です。条件付きの解除の意思表示は、条件が成就したときに効力が生じる性質のものであり、その条件(期間内に履行がないこと)が成就したかどうかが、後から争いになりえます。たとえば、期間内に履行の一部があった、履行の申出があった、相手方から異議が出た、といった場合には、条件が成就したのかが分かりにくくなります。こうした場面に備えて、Bの書き方にしても、期間が経過した後に、確認の書面(「期間内に履行がなかったので、〇月〇日付の書面のとおり、本契約は解除された」という旨)を重ねて出す運用もあります。

Aの出し方は、書面が二通になる分、時間がかかる反面、相手方に履行の機会を二度与える形になります。相手方との関係を保ちたい場合や、不履行の程度が軽微かどうかの見極めが難しい場合に向いています。どちらを選ぶ場合も、解除の意思表示が相手方に届く時が効力発生の時になる点(民法97条1項、540条1項)に変わりはありません。通知はいつ「届いた」ことになるかで整理した到達の考え方を踏まえて、送り方を選びます。

書き方の例催告と停止条件付きの解除を同じ書面で出す場合の記載例(一般的な例)

  1. 貴社と当方との間の○○契約(以下「本契約」といいます。)に基づき、貴社は、令和○年○月分の代金として○円(税込)を、同年○月○日までにお支払いいただくことになっています。
  2. 当方は、貴社が上記の期日を過ぎても代金をお支払いにならないため、貴社に対し、本書面到達の日の翌日から起算して○日以内に、下記の口座へ全額が入金されるよう、お支払いを催告します。
  3. 上記の期間内にお支払いがない場合は、期間の経過をもって、本契約第○条に基づき、本契約を解除することといたします。この場合、別途の通知は行いません。
  4. 本書面は、本契約第○条第○項の定めによる催告であり、本契約の解除の意思表示を、停止条件付きで行うものです。

最後の項に「停止条件付き」と明記しておくと、書面の性質が読み手に伝わります。期間内に一部の入金があった場合の扱いは、あらかじめ決めておきます。

解除通知書の記載事項と、解除後に残ること

解除の意思表示をする書面は、「解除通知書」「契約解除のご通知」などの名称で出されます。名称に決まりはなく、解除の意思が読み取れることが重要です。記載する事項は、①契約の特定、②不履行の事実、③催告の経緯(催告の日、催告期間、その間の経過)、④解除の意思、⑤解除の根拠(民法541条、契約書第○条など)、⑥解除後の処理(返還・清算の求め)、の六つが基本になります。

解除通知書を出す前に確かめる項目

  • 契約の名称、契約日、当事者の名称が、契約書の記載と一致しているか
  • 不履行の事実が、日付とともに書かれているか(いつ、何が、どの程度履行されなかったか)
  • 催告の日と催告期間が書かれているか。催告書の控えと配達の記録は手元にあるか
  • 解除の意思が「解除する」と明確に書かれているか。「解除を検討している」といった曖昧な表現になっていないか
  • 解除の根拠が、民法の条文か契約書の条項かで書かれているか。必要に応じて予備的な根拠を併記したか
  • 解除の効力が生じる日がいつか。到達した時か、特定の日付か
  • 返還すべき物、精算すべき金銭があるときは、その内容と期限が書かれているか
  • 相手方が複数のときは、全員に宛てているか

解除をすると、各当事者は、相手方を原状に復させる義務を負います(民法545条1項本文)。金銭を返還するときは、受領の時から利息を付さなければならず(同条2項)、金銭以外の物を返還するときは、受領の時以後に生じた果実も返還しなければなりません(同条3項)。ただし、第三者の権利を害することはできません(同条1項ただし書)。そして、解除権の行使は損害賠償の請求を妨げないため(同条4項)、解除しても、不履行によって生じた損害の賠償を求める道は残ります。損害賠償の請求の根拠は債務不履行(民法415条)で、契約が解除されたときは、履行に代わる損害賠償を請求できる場合があります(同条2項3号)。

これらを、解除通知書にどこまで書くかは、事案次第です。解除の意思表示と、損害賠償の請求を同じ書面で出すこともできますが、損害額が固まっていない場合は、解除の通知を先に出し、損害賠償の請求は別の書面で行う方が、書面が整理されます。解除の通知書に、根拠のない金額や、確認していない損害を断定的に書くと、書面全体の信頼性が下がります。

解除権の行使に期間の定めがないとき

解除権を持つ側が、いつまでも解除するかどうかを決めないでいると、相手方は不安定な立場に置かれます。そこで民法は、解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方が、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅する、と定めています(民法547条)。解除するかどうか迷っている間に、相手方から確答の催告が来る場合があるので、その催告の期間を見落とさないようにします。

債務不履行による解除と、任意に契約を終わらせる解除を取り違えない

ここまでの解除は、相手方に債務不履行があることを前提にした解除です。ところが、契約の種類によっては、相手方に落ち度がなくても、一方の当事者が自分の都合で契約を終わらせることができる規定があります。たとえば、請負では、請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます(民法641条)。この規定を使えるのは注文者であり、仕事を引き受けた請負人ではありません。委任(準委任を含む)では、各当事者がいつでもその解除をすることができますが、相手方に不利な時期に解除したときなどは、相手方の損害を賠償しなければなりません(同651条1項・2項)。

不履行を理由とする解除と、任意の解除の比較

区分主な根拠使える人催告の要否注意点
不履行を理由とする解除民法541条・542条、契約書の解除条項相手方に不履行がある側(債権者)原則必要。民法542条の類型や契約書の定めがあれば不要不履行の事実と催告の経緯を書面で示す
請負の注文者の任意解除民法641条注文者のみ不要(仕事が完成しない間)損害の賠償を伴う。請負人側は使えない
委任・準委任の解除民法651条各当事者不要相手方に不利な時期の解除などは損害賠償の問題になりうる。「やむを得ない事由」があるときは別
契約書の中途解約条項契約書の定め契約書が定める当事者契約書による(予告期間を置くことが多い)予告の日数、方法、解約金の定めを確認する

通知書を書く場面で多い失敗は、立場に合わない根拠を引くことです。たとえば、仕事を引き受けた側(請負人や受託者)が、「注文者による解除」の規定を根拠に契約を終わらせようとする書面を出してしまうと、その規定は注文者のための規定であるため、根拠が成り立ちません。受託者側が契約を終わらせたいときは、契約書の中途解約・解除の条項や、契約の性質が準委任であれば委任の解除の規定を確認し、不履行を理由にするなら民法541条・542条の手続によります。言葉と根拠条文の選び方は、取消し・解除・解約・撤回・相殺・更新拒絶の違いで整理しています。

任意の解除と、不履行を理由とする解除は、書面の中で混在させないようにします。一つの書面に「債務不履行を理由に解除する。仮にこれが認められない場合は、契約書第○条の中途解約として扱う」と予備的に書く方法は用いられますが、その場合も、それぞれの根拠に必要な手続(催告、予告期間)を満たしていることが前提です。予備的な根拠の予告期間が足りていなければ、予備的な主張として成り立たない場合があります。

催告・解除の書面の送り方|届いた事実と中身を残す

催告や解除の通知は、相手方に届いて初めて効力を生じます(民法97条1項)。そのため、書面の内容と同じくらい、送り方と記録が重要になります。基本は、①書面の内容が後から示せること、②いつ届いたかが後から示せること、③同じ内容を別の経路でも知らせておくこと、の三つです。

①には、内容証明郵便が使われます。内容証明は、郵便局が、その郵便物の内容である文書の内容を証明する取扱いです(郵便法48条1項)。②には、配達証明のように、配達した事実を証明する取扱いや、書留の追跡記録が使われます。内容証明は、それだけで書面が相手方に届いたことを示すものではないため、配達の記録とあわせることが多くなります。③は、メールやメッセージでの通知の併用です。郵便が届かなかった場合や、受取りが遅れた場合に備えて、書面の写しを電子メールでも送り、送信の記録を残します。郵便の種類ごとの役割は、内容証明・通知書・催告書の全体像で、電子的な通知の記録の残し方は、メール・LINE・電子契約サービスでの通知で整理しています。

受取拒否や不在返戻、転居不明といった場合に、いつ届いたことになるかは、場面によって異なります。相手方が正当な理由なく到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(民法97条2項)。もっとも、不在で戻ってきた場合などは、この規定に当たるかが場面ごとに分かれるため、再度の送付や、別の経路での通知を検討することになります。契約書に、通知先の変更の届出義務や、到達のみなしの定めがある場合は、その定めに従って送ります。

催告・解除の書面で起きがちなことと、受け取った側の見方

受け取った側の見方

催告や解除の通知書を受け取った側には、確かめる順序があります。まず、書面がいつ届いたか(到達日)を記録します。次に、書面が催告なのか、解除の意思表示なのか、両方なのかを読み取ります。催告であれば期間の末日を確認して、その日までに何をするかを決めます。解除の意思表示であれば、解除の根拠と、契約書の解除条項に合っているかを確かめます。解除の意思表示は撤回できませんが(民法540条2項)、解除の根拠が実際の事実や契約の定めと合っていなければ、解除の有効性を争う余地があります。通知書を受け取ったとき・届かないとき・間違えたときで、受け取った書面への回答の組み立てを整理しています。

起きがちなこと

場面別の起きがちなこと

  • 催告の期間を定めずに「速やかにお支払いください」とだけ書いて、解除の前提となる催告として足りるかが後から問題になった
  • 契約書に催告の方法(書面)が定められているのに、電話とメールだけで催告して、催告の有効性を争われた
  • 催告書に「期限までに支払われない場合は解除する」と書いたが、それが条件付きの解除の意思表示なのか、改めて通知するのかが書面から読み取れなかった
  • 期間内に一部だけ入金があり、条件が成就したのか、不履行が軽微なのかの判断が分かれた
  • 契約の相手方が複数名なのに、一人にだけ解除通知を出した
  • 請負の注文者だけが使える解除の条文を、受注者側の通知書に根拠として引いてしまった
  • 解除通知書に、まだ確認していない損害額を断定的に書いて、後から訂正が必要になった
  • 催告のあとで、うっかり代金の一部を受け取り続け、解除の意思を撤回したと読まれかねない状況になった
  • 解除したあとの返還すべき物や精算の方法を書かずに通知し、その後の連絡が長引いた
  • 相手方から解除するかどうかの確答の催告が届いたのを見落とし、確答の期間が過ぎた

よくあるご質問

催告をせずに、いきなり解除通知を出すことはできますか。

債務の全部の履行が不能である場合、債務者が履行を明確に拒絶した場合など、民法542条に定める類型に当たるときは、催告をせずに直ちに解除できます。契約書に「催告なし」で解除できる事由が定められている場合は、その事由に当たるときも同様です。それ以外の場合は、相当の期間を定めた催告が先に必要です(民法541条)。どの類型に当たるかは、事実と契約書の定めに照らして確かめます。

催告書と解除通知書は、一通にまとめてもよいですか。

まとめて出すことはできます。「期間内に履行がないときは、期間の経過をもって契約を解除する」と書く方法がありますが、条件付きの解除の意思表示になるため、書面の性質を明記し、期間内に一部の履行があった場合の扱いなどを事前に整理しておく必要があります。慎重を期す場合は、催告のみの書面を出し、期間の経過後に、改めて解除通知書を出す方法もあります。

解除の意思表示を出したあとで、やっぱり取り消すことはできますか。

解除の意思表示は、撤回することができません(民法540条2項)。契約を元に戻したい場合は、新たな合意(契約の復活や新たな契約)が必要です。解除通知を出す前に、解除の根拠と、解除後に何が起きるのかを確認しておきます。

催告の期間は、何日にすればよいですか。

民法は「相当の期間」としており、一律の日数はありません。契約書に催告期間の日数の定めがあれば、その日数に従います。定めがないときは、債務の内容(金銭の支払か、物の製造や作業の完了か)や、履行に必要な準備に照らして、余裕をもった日数を、固定の日付か到達後の日数で特定します。短すぎる期間は、解除の効力を争われる原因になります。

解除したら、損害賠償は請求できなくなりますか。

請求できなくなるわけではありません。解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げないとされています(民法545条4項)。債務不履行による損害賠償は同415条に基づき、契約が解除された場合は、履行に代わる損害賠償を請求できる場合があります(同条2項3号)。損害の額や範囲は事案ごとに異なるため、通知書には確認できた事実の範囲で書きます。

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